会社設立 印鑑 必要かどうかの結論|「不要」と言われる範囲と、届け出ておく印鑑

この記事で扱う印鑑
- 代表者印
- 銀行印
- 角印
- 印鑑届書
読んでほしいのは、次のような場面にいる人です
- 「会社設立 印鑑 不要」と見かけて、はんこを作らずに進めてよいのか迷っている人
- 3本セットか4本セットか、そもそも何本が必要なのかを、買う前に整理したい人
- 個人の実印と会社の印鑑を、同じものでよいのか分けるべきなのか知りたい人
ここは「必要か不要か」の結論をつける記事です。サイズ・書体・値段・書き方は、下の子記事と各カテゴリーへ進んでください。
先に言葉をそろえます。「代表者印」は、代表取締役などが登記所へ出しておく会社の印で、「会社実印」「届出印」と呼ばれるものも同じ印を指します。また「印章」は印材に彫ったはんこそのもの、「印影」は紙に押して残った跡、「印鑑」は本来その印影の控えを意味しますが、日常では印章まで含めて使われます。この記事でも、場面に応じて言い換えながら進めます。
そこで本題です。会社設立の場面で法令にもとづく届出の対象は、代表者印ただ一つ。銀行印、角印、ゴム印を持つかどうかは、会社の判断になります。この二つを混ぜると、「必要」と「不要」が両方正しく聞こえて、混乱のもとになります。
なお、「会社設立に印鑑は要らなくなった」という一般化も、「全部そろえないと設立できない」という言い方も、どちらも正確ではありません。条文と公的機関の案内の文言を引きながら、どこまでが決まりで、どこからが選択なのかを切り分けます。
会社設立で「印鑑が必要」と言うとき、指している印はどれか

会社を作る準備で「はんこが必要」と聞くと、つい一つの話に聞こえます。ところが実際には、役割のちがう印が混ざっています。法務局に届け出る代表者印、金融機関に届ける銀行印、書類に社名を示す角印、住所や社名を押すゴム印。同じ「会社の印」でも、法令に根拠があるのは最初の一つだけです。
| 印 | 法務局への届出 | 主な使い道 |
|---|---|---|
| 代表者印(会社実印) | 届出の対象 | 登記の申請書、印鑑証明書の元になる印 |
| 銀行印 | 対象外(金融機関に届ける) | 法人口座の届出印 |
| 角印(社印) | 対象外 | 見積書・請求書などの社名の表示 |
| ゴム印・住所印 | 対象外 | 社名・住所・氏名の連記 |
届出の根拠は商業登記規則にあります。印鑑の大きさや「照合に適する」ことの決まりも、そこに書かれている届出用の印に対するものです。大きさの規定の読み方は会社設立の印鑑のサイズ規定で扱っています。
- 印章
- 印材に文字を彫った、はんこそのもの
- 印影
- 紙に押して残った跡。登記所で照合されるのはこちら
- 印鑑
- 本来は届け出た印影の控え。日常では印章を含めて広く使われる
- 代表者印
- 法務局に届け出る会社の印。会社実印・届出印と呼ばれるのも同じ印
4種類それぞれの役割は会社設立で作る印鑑の種類に任せ、ここでは「どれが決まりで、どれが選択か」だけを頭に入れてください。
※1出典:商業登記規則|e-Gov 法令検索(e-Gov(デジタル庁)・確認日 2026年10月23日)
会社設立 印鑑 不要と言われる理由|オンライン申請で届出が任意になった

検索すると、「会社設立 印鑑 不要」という言葉がよく出てきます。根っこにあるのは令和3年2月15日の制度の見直しです。法務省は、オンラインによる印鑑の提出に関する案内で、次のように書いています。
令和3年2月15日から、登記の申請をオンラインで行う場合は、印鑑の提出が任意になりますが、代表者の印鑑証明書が必要などの理由で印鑑を提出される場合には、オンラインによる登記の申請と同時に行う場合に限り、オンラインにより行うことができるようになりました。
「任意」になったのは印鑑の提出(法務局への届出)です。印を作る行為が禁じられたのでも、不要だと宣言されたのでもないのです。しかも対象は、登記の申請をオンラインで行う場合に限られています。
もう一点、案内には届出の方法も出ています。印鑑を出すなら、オンラインなら登記の申請と同時に出す形です。登記が済んだあとで気が変わっても、届出だけをオンラインで単独に出す道はありません。この点は、あとから出したい会社向けにオンライン申請で印鑑を届け出なかった会社へでまとめています。
- オンラインで申請すれば、代表者印は作らなくてよいのですか?
- 任意になったのは提出の義務だけで、作らないほうがよいという話ではないのです。作るかどうかは、法人の印鑑証明書を使う予定があるかで決まります。次の見出し以降で、困る場面を並べます。
- 「任意」と「不要」は同じ意味ですか?
- 別のものです。任意は、出しても出さなくても法令上は構わないという意味です。出さなかった場合の影響(証明書が取れない)は別に残ります。
「不要」と書かれた記事の多くは、この任意化を短く言い切ったものです。理由の細部は会社設立の印鑑が不要と言われる理由で、条件ごとの整理はオンライン申請なら届出が任意になる条件で扱っています。
※2出典:法務省「商業登記規則が改正され,オンライン申請がより便利になりました(令和3年2月15日から)」(法務省・確認日 2026年10月23日)
書面で申請するなら必要|「不要」と一般化できない場面

同じ法務省のページには、任意にならない側の説明もあります。盲点になるのが、パソコンで作った申請なのに「紙で出す」扱いになるものがあることです。
書面申請(QRコード(二次元バーコード)付き書面申請を含む。)の場合や代理人による申請で委任状を書面により持参又は送付する場合は、従来どおり書面(紙)による印鑑の提出が必要です。
ここから読み取れる条件は三つです。紙の申請書で出すとき、QRコード付きの書面で出すとき、代理人が紙の委任状を持ってくる、あるいは送るとき。この三つはどれも、従来どおり紙で印鑑を出す側に分類されます。司法書士に依頼して紙の委任状を渡す会社も、この側に入ります。

ちなみに、登記の申請書に申請人または代表者が押印するときは、登記所に提出している印鑑を押す、と商業登記規則35条の2に書かれています。紙で申請する会社では、届出と申請書への押印が一組で進みます。順番を誤ると、押すべき印が決まっておらず書類が先へ進みません。
紙で届け出る場合の書き方や添付書類は会社設立の印鑑届出書にまとめています。登記申請書や定款に押す位置・向きは、別のテーマ(登記・定款)の領分です。
※3出典:法務省「オンラインによる印鑑の提出又は廃止の届出について(商業・法人登記)」(法務省・確認日 2026年10月23日)
届け出ない場合に困ること|法人の印鑑証明書は届出の先にある

「任意なら出さなくてもよさそう」と考える人が見落としやすいのが、法人の印鑑証明書です。商業登記法12条1項は、証明書の交付を請求できる人を、印鑑を提出した人に限っています。
次に掲げる者でその印鑑を登記所に提出した者は、手数料を納付して、その印鑑の証明書の交付を請求することができる。
裏返せば、届出をしていない印には、証明書が発行されません。会社設立のあと、法人口座の開設、不動産や自動車の手続き、取引先との契約などで法人の印鑑証明書を求められると、そこで初めて届出の段階まで戻って始めるしかありません。
もう一つの関門が印鑑カードです。法務局の案内には、印鑑証明書の交付申請には印鑑カードをも提出するよう書かれ、送付を頼む場合も例外ではないと添えられています。届出、カード、証明書は、順番に積み上がる三段です。

費用の目安は法務省の手数料ページ(2026年10月23日確認)にあります。令和7年4月1日以降、法人の印鑑証明書は1通につき、書面の請求が500円、ネット請求+郵送受取が450円、ネット請求+窓口受取が420円とされ、額は請求の方法で決まります。取得手順は法人の印鑑証明書の取得方法、カードは印鑑カードの交付で扱っています。
※4出典:法務局「登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式」(法務局・確認日 2026年10月23日)
3本セットか4本セットか|銀行印・角印・ゴム印の「必要」の中身

「会社設立 印鑑 必要」の次によく出る関連語が、3本セットと4本セットです。名前だけ見ると「4本が正解」「3本で十分」と決めたくなりますが、本数を定める法令はありません。決まりがあるのは、届け出る代表者印の大きさと照合のしやすさのところまでです。
一般には、代表者印、銀行印、角印を合わせて3本とするセットが多く見られます。4本セットの四つ目は、ゴム印のこともあれば、認印のこともあり、構成は商品ごとに違います。呼び名を信じるより、何が入っているかを見るほうが確実です。
- 代表者印:届出の対象。オンライン申請で届けない選択もあるが、証明書を使う予定なら作る
- 銀行印:金融機関ごとに扱いが違う。代表者印の流用ができる場合もある
- 角印:請求書や見積書の社名表示。法律上の義務ではなく、取引先の慣行で用意する
- ゴム印:社名・住所・氏名をまとめて押せる。なくても設立はできる
銀行印については、ジェトロの案内にも「銀行印は、専門店で銀行取引用のものをお求めください(ただし、印鑑登録した印章を銀行印として流用することも、通常は可能です。)」という趣旨の記載があり、金融機関によって必要書類が異なるとも書かれています。口座を作る銀行の案内を、先に見ておくのが近道です。
店ごとの価格比較や商品の優劣は、このサイトでは扱いません。本数を決める筋道は会社設立の印鑑は何本必要か、セットの中身の確かめ方は3本セットと4本セットの中身へ進んでください。
※5出典:JETRO「Section 1. 登記(参考情報)」法人口座開設(日本貿易振興機構(JETRO)・確認日 2026年10月23日)
会社で使う印鑑と個人の印鑑|個人の実印が必要になる場面

「会社で使う印鑑 個人」という関連語は、二つの意味でよく使われます。一つは、個人の実印を会社の代表者印にしてよいのか。もう一つは、会社を作る人に個人の印鑑が必要なのか。前者は代表者印を個人の実印で兼ねられるかという話、後者は書類に添える個人の印鑑証明書の話で、論点が違います。
法人の印は登記所に届け出るもので、個人の実印は市区町村に登録するものです。登録先も、証明書を出す役所も異なります。代表者印を個人の実印と同じものにした場合、会社と個人の重要な印を一つに集めることになり、紛失や持ち出しのリスクが重なります。可否と落とし穴は個人の実印を代表者印として届けられるかで扱っています。
個人の側にも条件があります。紙で届け出るなら、商業登記規則9条5項1号により、代表者が印鑑を提出するときは、届書に押した印について市町村長が作成した証明書(作成後3か月以内のもの)を付けます。発起人など個人の印鑑証明書が求められる場面は設立時の書類の話になるため、個人の印鑑証明の発行で触れます。書類の一覧は別のテーマ(必要書類)の担当です。
※6出典:商業登記規則|e-Gov 法令検索(e-Gov(デジタル庁)・確認日 2026年10月23日)
契約書や口座開設で、会社の印鑑はどこまで求められるか

届出の話から少し離れて、取引の場面で会社の印が必要かを考えます。内閣府・法務省・経済産業省の「押印についてのQ&A」は、契約と押印の関係を次のように整理しています。
特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない。
契約は当事者の意思が合えば成り立つ、というのが出発点です。ただ、押印と印鑑証明書がそろっていれば、文書が本人の意思で作られたことを示しやすい、という実務上の意味は残ります。取引先が会社の印を求めるのは、この証拠としての働きを頼りにしているからでしょう。
口座開設では、金融機関ごとの運用の差が大きい点に注意が必要です。ネット銀行のなかには、届出印の登録を不要とするところもあります。逆に、窓口で法人の印鑑証明書と銀行印を求められる銀行もあります。必要書類は、口座を作る銀行の案内で確かめるしかありません。

※7出典:内閣府・法務省・経済産業省「押印についてのQ&A」(令和2年6月19日)(内閣府・確認日 2026年10月23日)
まとめ|会社設立の印鑑は「届出の対象」と「会社の判断」を分けて決める

会社設立の印鑑は必要か。結論は、二段階に分けると見えてきます。第一段階は、法務局への届出の対象かどうか。対象は代表者印だけで、オンライン申請なら令和3年2月15日から任意、書面申請や紙の委任状を使う代理申請では今も必要です。「不要」と一般化はできません。
第二段階は、使う場面があるかどうか。法人の印鑑証明書は届け出た印にしか出ないため、法人口座や契約、各種手続きで証明書を使う見込みがあるなら、届け出ておく選択が現実的です。銀行印、角印、ゴム印は、届出とは別に、会社の運用で判断します。
- 届出の対象は代表者印(会社実印・届出印)だけ
- オンライン申請は任意。届けるなら登記申請と同時にオンラインで
- 書面申請・QRコード付き書面申請・紙の委任状による代理申請は必要
- 法人の印鑑証明書(請求方法で420〜500円、2026年10月時点)は、届出と印鑑カードが前提
- 3本か4本かは名前でなく中身で決める。個人の実印との兼用は慎重に
不要と言い切る記事にも、必要と言い切る記事にも、半分ずつの正しさがあります。自分の会社がどの申請方法を選ぶか、設立後にどの書類を求められそうかを、メモに二行だけ書き出してから決めると、迷いが減ります。個別の判断が難しいときは、本店を管轄する法務局か、登記を依頼する司法書士に、予定している申請方法を伝えて確認してください。
※8出典:法務省「登記手数料について」(法務省・確認日 2026年10月23日)
はんこの話は、買う前に終わらせるほうが楽です。契約書、口座、不動産、補助金の申請書類。法人の印鑑証明書を出す場面が三つ思い浮かぶなら、代表者印を作って届け出る前提で段取りを組んでください。一つも浮かばない場合でも、あとから必要になったときの届出先と手順だけは、メモしておきましょう。下の記事一覧から、気になるテーマを選んで読み進めてください。
