会社設立 印鑑 定款の整理|定款に関わる印鑑と、法務局に届ける法人の印鑑は別物

この記事で扱う印鑑
- 代表者印
- 印鑑届書
- 印鑑カード
- 電子印鑑・電子署名
- 会社設立の準備中に「定款に押す印鑑は、会社の代表者印のことなのか」と引っかかっている人
- 「定款 印鑑 不要」と検索して、押印が要らない話なのか、法務局に届ける印鑑が要らない話なのか、区別がつかなくなった人
- 電子定款にするつもりで、法人の印鑑まで不要になるのかを確かめたい人
契印・割印といった押し方や、定款の記載事項は、姉妹テーマ「会社設立 登記 定款」の領分です。この記事が受け持つのは、印鑑の区別と、つまずきやすい点の仕分けまでです。
会社設立の手順書を順に追っていくと、早い段階で「定款」が登場し、その少し先で「印鑑」が登場します。この二つが近い場所に並ぶせいで、定款に押す印鑑と、法務局へ届け出る法人の印鑑が同じものに見えてしまう。検索窓に「定款 印鑑 不要」と打つ人が多いのも、そこに理由がありそうです。実際には、押す人も、押す時期も、根拠になる決まりも違います。
用語を先に整えます。彫った本体が印章、紙に残った跡が印影で、日常ではまとめて印鑑と呼びます。法務局に届け出た代表者印を、会社実印あるいは届出印と呼びます。法律上の届出の対象になるのはこの一本だけで、銀行印・角印・ゴム印は任意です。定款に押す印鑑は、このどれにも当てはまりません。ここが出発点です。
制度の確認日は2026年10月23日です。法人の代表者印の提出は、登記をネット経由で申請するなら任意、紙で申請するなら必要、と申請の手段で分かれます(任意になったのは2021年2月15日から)。この分かれ目があるため、「会社設立に印鑑は不要」と一括りにはできません。
会社設立の定款に押す印鑑と、法務局に届ける法人の印鑑を先に分ける

会社設立の書類で印鑑が登場する場面は、二系統あります。設立前に、発起人(合同会社なら出資して社員になる予定の人)が定款に押す印が一つ。設立にあわせて、会社が法務局に提出する法人の代表者印がもう一つです。前者の主役は人、後者の主役は会社。この違いを頭に置くだけで、記事の読み間違いはかなり減ります。

左の列は、会社がまだ存在しない間の話です。したがって、会社の代表者印を定款に押す、という順序にはなりません。右の列は、会社が登記で生まれたあと、あるいは設立登記の申請とあわせて、法人の印鑑を登記所に預ける話です。
法人の印鑑を届け出る制度の全体像は、会社設立に印鑑は必要かの記事で、代表者印・会社実印・届出印の関係は代表者印と会社実印の関係の記事で整理しています。定款に関わる印鑑の区別を一本にまとめた解説は、定款に関わる印鑑の区別です。
※1出典:e-Gov法令検索「会社法」(平成十七年法律第八十六号)第26条・第30条・第575条(e-Gov法令検索・確認日 2026年10月23日)
定款に押すのは誰の印鑑か:会社法の「署名又は記名押印」を読む

まず株式会社です。会社法26条1項の文言を、e-Gov法令検索で読み直しました(2026年10月23日)。
株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
読み取れることは三つあります。押す主体は発起人全員であること。方法は署名でも記名押印でもよいこと。そして、押す印鑑の種類や大きさには何も書かれていないことです。合同会社などの持分会社は575条1項で、主語が「社員になろうとする者」に替わるだけで、骨組みは同じです。
実務では、発起人が個人なら実印を押し、公証役場には発起人の印鑑証明書を添える、と案内する解説が多く見られます。弥生の解説も、書面での定款認証には発起人全員分の印鑑証明書と実印が要ると書いています。ここで言う実印は、市区町村に登録した個人の印鑑です。法務局に届ける法人の印鑑とは、登録先も持ち主も異なります。
署名と記名押印の違いも、頭に入れておくと読み違いません。署名は本人が自筆で名前を書くこと、記名押印は名前を印字やゴム印などで記して印を押すことを指します。条文はどちらでもよいとしているので、「定款には必ず印鑑が要る」とも「印鑑は絶対に要らない」とも言い切れず、実際の運用は認証を行う公証役場の案内が決め手になります。株式会社は、会社法30条1項のとおり、公証人の認証を経ないと定款の効力が生じません。印鑑証明書が求められるのは、その認証の窓口です。
もう一点。条文は押印の方法まで細かくは決めておらず、複数ページの定款をどう綴じ、どこへ契印や割印をするかは、公証役場や専門家の案内に従う分野です。綴じ方や押し方の細部は、姉妹テーマ「会社設立 登記 定款」に任せます。
※2出典:法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」(法務省・確認日 2026年10月23日)
会社設立の定款に印鑑は不要なのか:省略できる場面とできない場面

「会社設立 定款 印鑑 不要」と書かれた記事を見かけたら、まず三つの問いに分けて読みます。定款への押印が不要という話か。法務局への印鑑の提出が不要という話か。契約書一般で押印が不要という話か。この三つは別の制度です。

契約の押印について、内閣府・法務省・経済産業省のQ&Aは、「特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない」としています。ただ、これが対象にしているのは契約です。定款には会社法に署名・記名押印の規定があるため、同じ理屈で押印を外せるとは言えません。法務省の押印の案内でも、押印を要する書面の例に、定款(会社法26条1項)が挙がっています。
一方、法務局に預ける法人の印鑑は、ネット申請なら任意になりました。これを「定款の印鑑も要らなくなった」と受け取るのは早合点です。どの印を、どの書類に、どんな手段で出すのか。その三点を順に確かめていくのが、遠回りに見えて確実です。
※3出典:内閣府・法務省・経済産業省「押印についてのQ&A」(令和2年6月19日)(内閣府・確認日 2026年10月23日)
書面の定款と電子定款:押印が電子署名に置き換わるとき

同じ26条の2項には、定款をデータで作ってよい、という規定が続きます。その場合、紙の署名・記名押印にあたる部分は、法務省令の定める代替の措置で済ませます。実務では、印影の代わりに電子署名を付す形になります。また、2021年2月15日からは、定款の認証の嘱託と設立登記の申請を一度にオンラインで出す扱いも、法務省が始めています。
紛らわしいのは電子印鑑との関係です。画面上で印影の画像を貼ったものと、電子署名法が定める電子署名は、同じ物ではありません。分かれ目は、誰が作成したか・改ざんされていないかを確かめられる仕組みの有無で、画像だけで要件を満たすとは言い切れません。区別の詳しい説明は電子印鑑と電子署名の違いにあります。
| 書面の定款 | 電子定款 | |
|---|---|---|
| 発起人の側の手当 | 署名、または記名押印 | 電子署名などの措置(会社法26条2項) |
| 個人の印鑑 | 実印を使うのが一般的と解説される | 電子署名の方式で変わる |
| 法人の印鑑の届出 | 書面申請なら提出が必要 | オンライン申請なら任意(提出は可) |
表の最下段が肝心です。電子定款を選んでも、会社の代表者印まで自動的に不要になる、という仕組みはありません。確認できるのは、ネットでの登記申請なら提出が任意、というところまでです。設立後に、金融機関や取引先から法人の印鑑証明書を求められると、結局は届出が要る、という順序になる会社もあります。
※4出典:法務省「オンラインによる定款認証及び設立登記の同時申請の取扱いを開始しました」(法務省・確認日 2026年10月23日)
定款ができたあとに作る法人の印鑑:代表者印は登記の申請方法で要否が変わる

定款の準備が済むと、次は法務局に届ける法人の印鑑の番です。法務省の案内によれば、ネット経由の登記申請であれば、令和3年2月15日以降、印鑑を出すかどうかは申請人が選べます。紙の申請や、紙の委任状を持参・郵送する代理申請は対象外で、これまでどおり紙で印鑑を出します。
代表者の印鑑証明書がほしいなどの理由で提出するときも、ネットで出せるのは登記の申請と同時の場合だけです。印鑑だけを単独でネット提出する方法はない、と同じページの【注意】にあります。
寸法の縛りは、商業登記規則9条3項にあります。小さすぎて1cm四方に収まる印、大きすぎて3cm四方に収まらない印は、どちらも届出に使えない、という禁止の書き方です。丸印に置き換えると、直径10mmちょうどは外、30mmちょうどは内。9条4項は、これに加えて、登記所で照合できる印影であることを求めています。定款に押す発起人の印鑑には、この大きさの規定は出てきません。
法人の印鑑を作るタイミングは、定款の認証や登記申請の段取りと絡みます。時系列の組み立ては会社設立 印鑑 いつのカテゴリーで、届出書の書き方は印鑑届出書の書き方で扱っています。設立手続き全体の流れは、姉妹テーマ「会社設立 流れ」を見てください。
※5出典:法務省「オンラインによる印鑑の提出又は廃止の届出について(商業・法人登記)」(法務省・確認日 2026年10月23日)
定款の印鑑と印鑑カードは無関係:法人の印鑑カードの位置づけ

「会社設立 定款 印鑑 カード」という検索語も出ています。ここも整理が要ります。印鑑カードは、法務局に印鑑を提出した会社が、印鑑証明書を請求するときに使うカードです。根拠は商業登記規則9条の4第1項で、印鑑を提出した人が交付を請求できる仕組みです。順番は、法人の印鑑の提出が先、カードの請求があと。

法務省の案内文には、印鑑証明書を請求するなら印鑑カードを出す、郵送でもそれは変わらない、とあります。ですから定款に押した印影と印鑑カードの間に、直接のつながりはありません。カードの手続きは印鑑カード交付申請の記事、証明書の取り方は法人の印鑑証明書の取り方の記事に回します。
※6出典:法務省「会社・法人の登記事項証明書等を請求される方へ」(法務省・確認日 2026年10月23日)
迷いやすい点を一問一答で:合同会社・発起人が法人のとき・個人の印鑑証明書

Q. 合同会社の定款には、公証人の認証がないから印鑑は不要か。
A. 認証が要らない点は、法務省の合同会社の案内に書かれています。それでも575条1項は、全社員の署名か記名押印を求めたままです。認証の有無と、署名や押印の有無は別の話です。
Q. 発起人が法人の場合、定款には法人の代表者印を押すのか。
A. 条文は押す印の種類を指定していません。実務の解説では、法人の登記事項証明書や代表者の印鑑証明書を求められるなど、個人の場合と添付書類が変わると紹介されています。具体的な扱いは、事前に公証役場へ問い合わせて決めます。
Q. 定款に会社の代表者印を押しておけば、法務局への届出は済むのか。
A. 済みません。届出は、印鑑届書などで別に行う手続きです。定款に押した印影が、そのまま届け出た印影として扱われることもありません。
Q. 発起人の印鑑証明書は、このサイトのどこで説明されるのか。
A. 発起人個人の印鑑証明書は、市区町村が発行するものです。取り寄せ方は姉妹テーマ「会社設立 必要書類」で詳しく扱われています。ここでは、別の印鑑証明書だと示すだけにします。
この一問一答で見えてくるのは、「定款の話か、法人の印鑑の話か」と最初に問う癖の大切さです。専門家向けの資料を読むときも、同じ「印鑑」という一語が別の対象を指している場合があります。個人の実印の流用が気になる人は、個人の実印は代表者印にできるかの記事も参考になります。
専門家に頼む場合でも、見方は変わりません。司法書士や行政書士に定款の作成を任せると、押印の段取りまで案内されることが多く、自分で用意する印鑑は何か、と聞かれたときに答えやすくなります。誰に頼むのが合うかは、姉妹テーマ「会社設立 依頼 専門家」で比べられます。
解説記事ごとに説明が食い違って見えるときは、まず、対象が株式会社か合同会社か、紙かネットか、発起人が個人か法人かを見比べます。条件が違えば、答えも違います。
※7出典:弥生株式会社「定款認証の必要書類は?電子定款の場合や公証役場の手続きについて解説」(弥生株式会社・確認日 2026年10月23日)
まとめ|定款の印鑑は発起人の側、法人の印鑑は会社の側

会社設立で「定款」と「印鑑」が並んだときは、二つの流れに分けて考えます。定款の側は、発起人(社員になろうとする人)が、署名または記名押印、あるいは電子定款なら電子署名の措置をとる話です。法人の印鑑の側は、会社が代表者印を法務局に届け出て、必要なら印鑑カードと印鑑証明書へ進む話です。
- 定款に押す印は発起人の印。会社の代表者印を押す場面ではない
- 法人の印鑑の届出対象は代表者印だけ。銀行印・角印・ゴム印は任意
- 「印鑑は不要」は、定款・登記・契約のどれの話かを分けて読む
- ネットでの登記申請なら法人の印鑑の提出は任意。紙の申請では必要
- 印鑑カードは法人の印鑑を提出したあとの手続き。定款とは直接つながらない
- 発起人個人の印鑑証明書は市区町村の発行で、当サイトの守備範囲ではない
挙げた制度は2026年10月23日に確かめた内容です。改正があり得るので、動く前に法務省・法務局・公証役場の最新の案内を開いてください。次に読む記事としては、法人の印鑑を何本作るか決める段階なら会社設立 印鑑 種類、サイズなら会社設立 印鑑 サイズへ進めます。
法務省は、商業・法人登記の申請書や添付書面の押印の要否を、一覧のページで示しています。押印を要する書面の例に定款が挙がり、押印を要しない書面の例に株主リストなどが挙がる構成です。迷ったときの確認先として、手元に置いておくと役に立ちます。
※8出典:法務省「申請書、各添付書面等の押印の要否について(商業・法人登記)」(法務省・確認日 2026年10月23日)
押す前に、誰の印かを書き出してみる
書類の山を前にすると、印鑑という言葉は全部同じに見えてきます。付箋を一枚用意して、「定款:発起人」「届出:代表者印」「銀行:任意」と書き、机の端に貼っておく。押し間違いも読み違いも、これでずいぶん減ります。印影を紙に落とす前に、その一手間をどうぞ。
