会社設立の印鑑のサイズ規定|代表者印の「1cm超・3cm以内」を条文と届書で読む

この記事で扱う印鑑
- 代表者印
- 印鑑届書
- 銀行印
- 角印
- 代表者印のサイズ規定を、言い換えではなく条文の言葉で確かめておきたい人
- 「1cm以上」「1cm超」など、解説によって書き方が違うのが気になっている人
- 手持ちの印鑑や個人の実印を会社の届出印にできるか、大きさから判断したい人
会社設立の印鑑を選ぶとき、「1cm以上」と「1cmを超える」は同じ意味ではありません。直径10mmの丸印は、この違いによって判断が変わります。印鑑の寸法を法務局へ提出する条件と、使いやすさの目安に分け、法人の届出印を注文する前に確認しましょう。
答えは条文にあります。商業登記規則9条3項は、大きさを「収まるもの」「収まらないもの」という独特の言い回しで決めています。ここでは、その一文を分解し、法務局の届書の注記とも照らし合わせながら、会社の印鑑のサイズ規定がどこまでを求めているのかを確かめていきます。
本体は印章、押してできた跡は印影と呼びます。この記事では日常語として本体も印鑑と表記します。代表者印を登記所に届けたものが会社実印・届出印です。銀行印・角印・ゴム印の作成は任意で、この三つを一式で作る義務はありません。オンラインでの会社設立登記では印鑑提出は任意ですが、紙の委任状を使う場合などには届出印が必要になるため、申請方法も併せて確かめます。
参照資料:法務省「商業登記規則が改正され,オンライン申請がより便利になりました(令和3年2月15日から)」 / 法務省「オンラインによる印鑑の提出又は廃止の届出について(商業・法人登記)」
商業登記規則の寸法条件がかかる印鑑を区別する

最初に範囲をはっきりさせておきます。会社の印鑑で大きさの規定が問題になるのは、法務局(登記所)に届け出る代表者印、いわゆる会社実印だけです。商業登記規則9条は「印鑑の提出等」を定めた条文で、その3項と4項が、届け出る印鑑の大きさと性質を決めています。
この条文が定めるのは登記所へ提出する印鑑です。銀行印については金融機関の受付条件を確認します。日常用の角印や住所を転記するゴム印にも、この条文の寸法をそのまま当てはめる必要はありません。ただし、四角い形の印を代表者印として届け出る場合には対象となります。用途と提出先から判断するのが先です。
- 会社実印・登記所の届出印
- 商業登記規則9条3項・4項を確認
- 銀行の届出印
- 取引する金融機関の条件を確認
- 日常用の角印・住所印
- 通常は登記所への提出を要しない。銀行の署名判など別の登録条件に注意
オンライン申請における印鑑提出の任意化は2021年2月15日からです。法人の印鑑証明書が必要になる場合や、委任状を書面で提出する場合などは、印鑑を届け出る必要があります。会社設立の段階で提出を予定するなら寸法を先に確認し、提出しない方針なら後日の取引先の要求も検討します。注文することと届け出ることを同じ手続として扱わないようにします。
株式会社の代表取締役と合同会社の代表社員で、この寸法条件が変わるわけではありません。法人の種類によって書類や記載事項に違いがあっても、会社設立の届出印を測る根拠は同じ規則です。彫る文字や届出人の資格は別に確認してください。
参照資料:法務省「商業登記規則が改正され,オンライン申請がより便利になりました(令和3年2月15日から)」 / 法務省「オンラインによる印鑑の提出又は廃止の届出について(商業・法人登記)」 / シヤチハタ公式メディア「住所印(住所スタンプ)とは?活用のメリットと作成のポイント」
※1出典:商業登記規則|e-Gov 法令検索(e-Gov(デジタル庁)・確認日 2026年10月12日)
商業登記規則9条3項を一語ずつ読む

条文はこうです。
印鑑の大きさは、辺の長さが一センチメートルの正方形に収まるもの又は辺の長さが三センチメートルの正方形に収まらないものであつてはならない。
この一文は「〜であってはならない」で終わる禁止の形をとっています。禁じられているのは二つです。一つは「一辺1cmの正方形に収まるもの」、つまり小さすぎる印鑑。もう一つは「一辺3cmの正方形に収まらないもの」、つまり大きすぎる印鑑です。
裏返すと、届け出られるのは「1cmの正方形には収まりきらず、3cmの正方形には収まる」大きさということになります。ここで効いてくるのが「収まる」という言葉です。直径がちょうど10mmの丸い印鑑は、一辺1cmの正方形にぴったり収まるので、禁じられた側に入ります。一方、直径がちょうど30mmの丸い印鑑は、一辺3cmの正方形に収まるので、届け出られる側です。

「1cm以上」と書かれた解説だけでは、10mmちょうどを含めて読んでしまいます。丸印については「直径10mm超」と区別します。注文画面に法人向けと表示されていても、商品名だけで判断せず、仕様欄の寸法と届出予定の印影を見比べてください。会社設立用の印鑑を手持ちの小さな印で代用するときほど、この境界の確認が役立ちます。
- 直径10.5mmの丸印なら届け出られますか?
- 一辺1cmの正方形には収まりきらないので、大きさの条件だけで言えば禁じられた側には入りません。ただ、そこまで小さいと外枠と内枠の文字が詰まり、照合に適するかという別の条件で心配が残ります。会社の印鑑としては、もっと余裕のある大きさが現実的です。
- 印影がにじんで、押すたびに大きさが少し変わります。
- 規定が見ているのは印鑑(印影)の大きさです。にじみで一回り太って見えるような押し方は、照合の面でも好ましくありません。朱肉の量と下敷きを整え、印面どおりの大きさで押せるようにしておきます。
※2出典:商業登記規則|e-Gov 法令検索(e-Gov(デジタル庁)・確認日 2026年10月12日)
法務局の届書の注記と、条文の書き方の違い

法務局の「印鑑(改印)届書」の様式には、注記としてこう書かれています。
(注1) 印鑑の大きさは、辺の長さが1㎝を超え、3㎝以内の正方形の中に収まるものでなければなりません。
条文が「〜であってはならない」と禁止の形で書いているのに対し、届書の注記は「〜でなければなりません」と、満たすべき条件の形で書いています。「1cmを超え」が条文の「1cmの正方形に収まるものは不可」に、「3cm以内の正方形の中に収まる」が「3cmの正方形に収まらないものは不可」に、それぞれ対応しています。言い方は違っても、指している範囲は同じです。
| 書いてあるところ | 書き方 | 下限の扱い |
|---|---|---|
| 商業登記規則9条3項 | 1cmの正方形に収まるもの…であってはならない | 1cmちょうどは不可 |
| 印鑑(改印)届書の注記 | 1cmを超え、3cm以内の正方形の中に収まる | 1cmちょうどは不可 |
| 解説記事の一部 | 1cm以上3cm以下 | 1cmちょうどの扱いがあいまい |
会社設立の準備で迷ったら、手元の印鑑届書の注記を読むのがいちばん早道です。印鑑届書は、設立登記の申請と同時に出すのが一般的な書類で、記載例も法務局のページに用意されています。届書の書き方そのものは印鑑届出書 登録の分類で扱っています。
※3出典:法務局「印鑑(改印)届書」様式(PDF)(法務局・確認日 2026年10月12日)
形の決まりはない:丸・四角・楕円の測り方

商業登記規則9条3項は、丸や四角といった輪郭を指定していません。丸い代表者印はよく見かける形ですが、丸であること自体が届出の条件ではありません。法人の印鑑を変わった形で作る場合も、まず条文にある二つの正方形との関係を確認します。
丸い印影なら、直径を測ることで10mmの正方形に収まるか、30mmの正方形に収まるかを比べられます。四角や楕円では、印影の全体と枠の関係を見ます。「縦も横も必ず10mmを超える」「短いほうの径も10mmを超える」という追加条件は、条文には書かれていません。長径だけで機械的に可否を決めず、細長い形や境界に近い形は実寸の見本を示して管轄の登記所に確認するのが確実です。

四角い角印を代表者印として届け出る会社は多くありませんが、一辺21mmや24mmの角印なら、大きさの範囲には収まります。大きさの規定を満たし、次の見出しで触れる「照合に適するもの」であれば、形だけで届出を断られる理由は条文の上には見当たりません。それでも、代表者印と角印を兼ねると、請求書に押すたびに会社の届出印を持ち出すことになります。届け出られるかどうかと、兼ねるのがよいかどうかは、分けて考える話です。
※4出典:商業登記規則|e-Gov 法令検索(e-Gov(デジタル庁)・確認日 2026年10月12日)
9条4項「照合に適するもの」が求めること

大きさの次の項、9条4項は短い一文です。
印鑑は、照合に適するものでなければならない。
この条件を考える際には、線がつぶれていないか、欠けたところがないか、押すたびに輪郭が変わらないかを見ます。文字を読めることだけでなく、届出時の印影と後の印影を照合できることが必要です。寸法の範囲に入っているという事実だけでは、法人の届出印として使えることの保証にはなりません。
オンラインで印鑑を届け出る場合の法務省の案内にも、この考え方がにじんでいます。1cmごとの目盛り付きの専用の様式を拡大・縮小せずに印刷して使い、物体による印章を用いて印影が鮮明となるよう押印し、原寸大かつ照合に適する程度の解像度(600dpi程度)でスキャンする、とされています。原寸で、はっきりと。紙でもデータでも、求められていることは同じです。
使用中に欠けや摩耗が見つかった場合は、当初の試し押しと比べ、照合できるかを確認します。使い続けるか迷うときは取扱店や登記所に相談し、印鑑を交換するなら改印手続も調べます。会社設立時の印鑑を新しくすることと、登録してある印影を変更することは別なので、買い替えだけで済ませないようにします。
- ゴムなど変形しやすい素材の印は、押すたびに印影が変わりやすい
- 線が極端に細い書体や、文字の詰まりすぎた印面は、かすれると判読しにくい
- 長年の使用ですり減った印鑑は、届け出た当時の印影と変わってくることがある
- 印影の画像データ(電子印鑑)は、物体による印章ではない
新品でも、細い線が押せない、縁が欠けている、にじみが目立つといった可能性はあります。届いた印鑑を箱から出しただけで確認を終えず、適した朱肉と平らな下敷きで試し押しします。古い印の流用でも新規注文でも、法人が届け出ようとする実際の印影を確認する点は共通です。
※5出典:法務省「オンラインによる印鑑の提出又は廃止の届出について(商業・法人登記)」(法務省・確認日 2026年10月12日)
規定の範囲で、よく選ばれている大きさ

1cm超・3cm以内という範囲はかなり広く、その中でどの大きさにするかは自由です。実際には、ある程度の目安が定着しています。弥生の会社設立の解説では、印鑑のサイズの目安として、代表印は18mmの丸印、銀行印は16.5mmの丸印、角印は一辺21mmまたは24mm、ゴム印は20mm×60mmが一般的と紹介しています。

18mmや21mmといった寸法は、会社設立用の印鑑を比較し始める候補です。文字の詰まり方は、商号の長さだけでなく字形や配置にも左右されます。15mmだから照合できない、21mmなら必ず読みやすい、とは決められません。彫刻前の校正と到着後の試し押しを使い分けて確認します。
30mmの丸印は大きさの条件には入りますが、そのことだけで受理や使いやすさが決まるわけではありません。契約書などの押印欄が小さければ、隣の文字と重なって照合しにくくなります。法人の印鑑は、規則上の範囲と日常使う書類の余白の両方を見て選びます。画面の拡大表示だけでは実際の大きさをつかめないため、寸法の分かる紙の見本が便利です。
大きさの選び方を、社名の文字数や押す書類から具体的に詰めていく話は、この分類のもう一本の記事で扱っています。書体との組み合わせは書体 おすすめ 篆書体、外枠と内枠の文字の入れ方は文字 内枠 外枠の分類が参考になります。
※6出典:弥生株式会社「会社設立時に必要な印鑑は?代表印(実印)などの種類や用途を解説」(弥生株式会社・確認日 2026年10月12日)
手元の印鑑を使う場合も、法人の基準で測り直す

会社設立の日に代表者印が間に合わない、とりあえず手元の印鑑で届け出たい。そんな場面で候補に挙がるのが、代表者個人の実印や銀行印です。会社の届出印に個人名の印鑑を使うこと自体は、大きさと照合の条件を満たせば、条文の上で妨げられてはいません。問題は、その大きさです。
個人の実印は市区町村への登録、法人の届出印は登記所への提出です。個人側で登録できているという理由で、会社設立の届出でも同じように使えるとは限りません。個人の印鑑証明書やその取得方法は、姉妹テーマ「会社設立 必要書類」で扱います。ここでは法人の印鑑として提出するために、実際の印影を測り直す点に絞ります。

後から会社名を彫った印へ変更することはできますが、代表者印を差し替えるなら改印の届出が必要です。流用する印鑑を個人用としても使い続けると、保管場所や持ち出す人の管理が複雑になります。会社設立のために一時的に使うのか、法人の印鑑として長く管理するのかを先に決めておくと、注文後の二度手間を避けやすくなります。
※7出典:商業登記規則|e-Gov 法令検索(e-Gov(デジタル庁)・確認日 2026年10月12日)
まとめ:サイズ規定は「1cmの枠に入らず、3cmの枠に入る」

会社設立にあたって登記所へ提出する印鑑は、商業登記規則9条の寸法条件と照合の条件を確認します。銀行に登録する印鑑や、通常の請求書に使う角印の注文条件とは区別しましょう。印鑑の呼び名ではなく、どこへ何のために提出するのかを確かめるのが出発点です。
- 届け出られるのは「1cmの正方形に収まらず、3cmの正方形に収まる」大きさ
- 直径10mmちょうどは不可、30mmちょうどは可。「1cm以上」という書き方は下限があいまい
- 丸印は直径で比較できる。四角や楕円は印影全体を見て、不明な形は登記所に確認する
- 照合に適すること:鮮明な印影、変形しにくい素材、原寸での提出
- 個人の実印を流用するなら、まず定規で測る
会社設立向けの商品であっても、到着後の試し押しは省かないでください。法人の印鑑は書類に押した跡を使って確認されるため、注文時の寸法表示、実際の印影、届書への押印の三つを順に見ます。特殊な形や寸法の相談は、彫刻を始める前に済ませると、作り直しを避けやすくなります。
※8出典:商業登記規則|e-Gov 法令検索(e-Gov(デジタル庁)・確認日 2026年10月12日)
定規を一本、印鑑ケースの隣に
新しく注文した印鑑も、手元から選んだ印鑑も、まず白い紙に試し押しをしてみてください。丸印なら直径を測り、二つの正方形との関係を確認します。境界に近い寸法や特殊な形で迷ったら、原寸の見本を用意して登記所に相談しましょう。

