代表者印と会社実印・届出印は同じ?会社設立で押さえる個人の実印との違い

この記事で扱う印鑑
- 代表者印
- 印鑑届書
- 印鑑証明書
- 印鑑カード
- 代表者印、会社実印、届出印、丸印と呼び名が多すぎて、何本作ればいいのか混乱している人
- 会社の実印と、市区町村に登録している自分の実印がどう違うのかを知りたい人
- 印鑑届書に「個人の実印も押す」と知って、理由を確かめたくなった人
会社設立の準備を始めると、「代表者印を作ってください」「会社実印を届け出ます」「届出印を押してください」と、似た言葉が次々に出てきます。別々の印を3本用意するのかと思ってしまいますが、通常は同じ一本について、役割と届出の状態を言い分けています。ただし、作ったばかりの代表者印はまだ登記所届出印ではなく、「丸印」は銀行印や認印も含む形の呼び名です。
ややこしいのは、同じ時期にもう一つの「実印」、つまり代表者個人の実印も登場することです。会社の実印と個人の実印。どちらも「実印」と呼ばれ、会社実印を書面で初めて届け出る際には、原則として個人の実印による本人確認も行います。この記事では、呼び名の整理から始めて、二つの実印の違いと、手続きの中でそれぞれが果たす役割を順に見ていきます。法務局への届出対象は代表者印で、銀行印・角印・ゴム印の作成は任意です。はんこの道具が印章、紙に残る形が印影。本稿では日常的な呼び方として印鑑と書きます。
代表者印を届け出ると会社実印・登記所届出印になる

法務局(登記所)に届け出る会社の印鑑には、いくつもの呼び名があります。同じ一本を指す場合もありますが、届け出る前か、届け出た後かという違いがあります。会社設立で注文する商品名と、書類が要求する印の条件を分けて読みましょう。
- 代表者印
- 代表取締役や代表社員などが、会社の代表として使用する印、という役割に注目した名前
- 会社実印・法人実印
- 届け出て証明書が出る「実印」の、会社版という位置づけに注目した名前
- 届出印・登記所届出印
- 登記所に届け出てある、という手続き上の状態に注目した名前
- 丸印
- 形を表す通称。丸い銀行印や認印もあり、会社実印と同じとは限らない
ほかにも「会社代表印」「法人印」などの言い方を見かけます。法人印は会社の印全般を指して使われることもあるので、文脈で見分けが必要です。迷ったら「その書類は法務局に届け出た印を求めているのか」を確かめれば、答えはたいてい一つに絞れます。
法令の言葉では、どれでもなく単に「印鑑」です。商業登記規則は、登記所に提出された印鑑を「登記所に提出している印鑑」と書き、法務局の様式も「印鑑(改印)届書」という名前になっています。代表者印という言い方は、実務で生まれた呼び名です。
会社設立の場面で「代表者印を作る」「会社実印を届け出る」「届出印を押す」と言われたら、注文して作る段階、法務局に提出する段階、提出済みの印で押す段階を区別しましょう。銀行印と兼用する場合もありますが、銀行の届出印と登記所の届出印は、それぞれの届出先で管理されます。

※1出典:商業登記規則|e-Gov 法令検索(e-Gov(デジタル庁)・確認日 2026年10月12日)
「実印」とは何か:届け出て、証明書が出る印

個人でも会社でも、「実印」とは、公的な機関に届け出て、登録・届出された印影との関係を証明書で確認できる印のことです。証明書があるだけで、誰が実際に押したかや契約内容まで自動的に保証されるわけではありません。個人の実印は住民登録のある市区町村に登録し、印鑑登録証明書が出ます。会社の実印は法務局に届け出て、法人の印鑑証明書が出ます。
会社側の根拠は商業登記法12条です。
次に掲げる者でその印鑑を登記所に提出した者は、手数料を納付して、その印鑑の証明書の交付を請求することができる。
つまり、どんなに立派な印材で作った印でも、登記所に出していなければ会社の「実印」にはなりません。反対に、大きさと照合可能性の条件を満たして届出が受け付けられれば、それが会社実印です。印そのものの素材や値段ではなく、届け出てあるかどうかが実印かどうかを分けます。

法人の印鑑証明書を1通取得する料金は、紙の申請なら500円です。ネットからの申請は、受取方法が郵送なら450円、窓口なら420円となります。いずれも2025年4月改定の額を2026年10月に確認しています。市区町村が発行する個人の証明書とは、料金も請求手順も異なります。
証明書を取るときの道具も違います。法人の印鑑証明書を窓口や郵送で請求するときは、届出のあとに交付を受けた印鑑カードを出します。交付申請書の公式案内では「印鑑証明書の交付の申請には印鑑カードをも提出してください」と案内していて、会社実印そのものを持っていく必要はありません。印を持ち歩かずに証明書を取れる、という点も、会社実印を金庫にしまっておける理由の一つです。
※2出典:法務省「登記手数料について」(法務省・確認日 2026年10月12日)
会社実印の印影には「大きさ」と「照合できること」の条件がある

会社設立に向けて代表者印を作るとき、印影について押さえる条件は二つあります。届出人の資格や添付情報は別の条件なので、印だけ整えれば手続き全体を満たすことにはなりません。商業登記規則9条3項の大きさと、同条4項の「照合に適するもの」です。
印鑑の大きさは、辺の長さが一センチメートルの正方形に収まるもの又は辺の長さが三センチメートルの正方形に収まらないものであつてはならない。
法務局の印鑑届書の注記では、同じことを「辺の長さが1㎝を超え,3㎝以内の正方形の中に収まるもの」と言い換えています。丸い印なら直径がおおむねこの範囲に入るかどうか、と考えるとわかりやすいでしょう。

この条文には特定の形・書体・印面の文字・素材は指定されていませんが、どんなものでも受理されるという意味ではなく、照合に適することが必要です。丸い二重枠の外側に社名、内側に「代表取締役印」と彫る形が広く使われているのは慣習によるものです。合同会社なら内側を「代表社員之印」などにすることが多いようです。
個人の実印の条件は住所地の市区町村に確認します。個人の登録手続きや印鑑登録証明書の準備は「会社設立・必要書類」で説明する分野です。本稿では法人用の規定とは区別して考えます。会社と個人で、同じ「実印」でも物差しが違うということです。サイズの考え方はサイズ規定の分類で確認できます。
※3出典:商業登記規則|e-Gov 法令検索(e-Gov(デジタル庁)・確認日 2026年10月12日)
会社設立の届出で、個人の実印も押す理由

会社実印を法務局に届け出る書面の「印鑑(改印)届書」には、会社の印を提出する枠と本人確認の欄があります。本人が提出する場合を例にすると、押す場所は二つです。代理提出の場合は委任状欄などを確認します。一つは提出する印影の枠。もう一つは、届け出る代表者本人が押す欄です。
書面で代表者本人が新しく届け出る場合、本人の欄には市区町村に登録済みの個人の実印を押します。そして届書には、作成後3か月以内の本人の印鑑証明書を添えます。株式会社設立の公式手順を見ると、書面申請の場合は印鑑届書に「届出印(会社代表者印)を押印するほか、会社代表者の個人印をも押印し」て提出する、と説明されています。
なぜ個人の実印が要るのか。会社の印鑑を新しく届け出る時点では、その会社の印がまだ公的に確認されていません。そこで、すでに市区町村で確認済みの個人の実印と、その証明書を使って、「確かに代表者本人が届け出ている」ことを裏づけるわけです。この説明は書面での通常の届出の場合です。オンライン登記と同時に印鑑を届け出る方法では、専用様式をPDF化して必要な電子署名と電子証明書を付ける方法を取り、単に印影画像を送るだけでは足りません。

個人の印鑑証明書を何通取るか、いつ取るかは、会社設立の必要書類全体の話になるので深入りしません。登記申請と同時に提出し、申請書の添付証明書を援用できる場合もあるため、届書用に必ずもう1通追加するとは限りません。届書の書き方は印鑑届出書と登録の分類にあります。
※4出典:法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」(法務省・確認日 2026年10月12日)
個人の実印を、そのまま会社実印にしてもいいのか

本数を減らしたい場合に考えられる疑問です。「自分の実印を、会社の実印としても届け出れば1本で済むのでは」。商業登記規則が求めるのは大きさと照合のしやすさで、社名を刻むこと自体は条文の指定に含まれていません。それでも、会社実印は会社のために別に作るのが一般的です。理由は運用の面にあります。
- 代表者が替わったとき、前任者個人の印を会社で使い続けるか、会社専用の印に替えるかの調整が必要になる
- 個人の実印をなくすと、市区町村と法務局の両方で手続きが要る
- 個人の契約と会社の契約に同じ印影が並び、どちらの立場で押したかが分かりにくい
- 会社の印を社員に預けたいとき、代表者個人の実印まで預けることになる
とくに大きいのは代表者の交代です。会社は代表者が替わっても続きますが、個人の実印はその人のものです。会社の印を個人から切り離しておけば、代表者が替わっても印は会社に残り、新しい代表者がその印を引き継いで届け出る、という形をとれます。
個人の実印と会社の実印は、作る順番にも関係します。届書に個人の実印を押す以上、書面による通常の届出では、市区町村の印鑑登録を先に整えます。オンライン提出の方法を選ぶ場合とは準備が異なります。
※5出典:法務局「印鑑(改印)届書」様式(PDF)(法務局・確認日 2026年10月12日)
代表者が替わったら、会社実印はどうなる

ここでは自然人が代表取締役などとして届け出る通常のケースを考えます。届出は会社名だけでなく、提出者の資格や氏名と結びついています。そのため代表者が替わると、新しい代表者があらためて印鑑を届け出ることになります。前任者が使っていた会社の印を新しい代表者が届け出る会社もあれば、この機会に作り直す会社もあります。
このとき便利なのが、印鑑カードの引継ぎです。商業登記規則9条の4第3項は、前の代表者が資格を失った場合、新しく印鑑を提出する人が、提出と同時に申し出ることで前任者の印鑑カードを承継して使えると定めています。
印鑑の提出をした者がその資格を喪失し、又は印鑑の廃止をした場合においては、その者に替わつて新たに印鑑を提出する者は、印鑑の提出と同時に申し出ることにより、資格を喪失し、又は印鑑の廃止をした者の印鑑カードを承継して使用することができる。
印鑑届書には「印鑑カードを引き継ぐ」「引き継がない」のチェック欄があり、引き継ぐ場合は印鑑カードの番号と前任者の氏名を書きます。新しい代表者が書面で届け出る場合も、個人の実印などによる本人確認の準備が必要です。会社の実印は会社に残っても、届け出る人の本人確認は、届出方法に応じて新しい代表者について行います。
- 前の代表者が印鑑カードを返してくれない場合は?
- 引き継げるのは、前任者のカードを新しい代表者が受け取って届書に番号を書ける場合です。引き継がない欄に印を付ければ、新しい代表者が新たに印鑑カードの交付を申請することになります。
- 新しい代表者の届出は、オンラインで変更登記をすれば紙は要りませんか?
- 登記をオンラインで申請する機会に限り、印鑑届書を同時送信する方法があります。指定の様式を原寸でスキャンしたPDFと、対応する電子署名・電子証明書などを準備します。紙の委任状を提出する代理申請では、届出印が必要な点に注意します。紙で届け出る場合、法務局の案内では、本店を管轄する窓口に届書を持参・郵送します。押印欄や添付する本人確認書類は、紙の様式にある注意事項に従ってそろえます。
交代の手続き全体は代表者変更の分類、印を新しく作り直す場合は改印・変更の分類で扱っています。
※6出典:商業登記規則|e-Gov 法令検索(e-Gov(デジタル庁)・確認日 2026年10月12日)
会社実印を使う場面:法務局の手続きと重い取引

会社実印の出番は、大きく二つの系統に分かれます。一つは法務局に出す書類、もう一つは取引の相手に出す書類です。
法務局向けでは、紙の登記申請書や、代理人に頼むときの委任状に押します。商業登記規則35条の2は、申請人やその代表者が申請書に押すときは押す印を登記所に届け出てあるものに限定しています。印鑑カードの交付申請書や、印鑑・印鑑カードの廃止届書にも、登記所に出した印を押します。
取引向けでは、不動産の売買や賃貸借、融資の契約、法人口座の開設など、相手が会社の意思をしっかり確かめたい場面で求められます。税理士法人の解説でも、法人口座の開設や不動産・融資の契約で、印鑑と印鑑証明書を求められる場面が多いとされています。こうした場面では、押した印影と法人の印鑑証明書を照らし合わせることで、届け出られた印影との一致を確認します。誰が押したかや、契約の内容・権限を確かめる作業は別に必要です。
逆に、請求書や見積書のような日常の書類にまで会社実印を押す必要はありません。日常の書類は角印、口座は銀行印、と役割を分けておけば、会社実印を金庫から出す回数が減り、紛失や盗用のリスクも下がります。押す書類と押さない書類の線引きは、同じ分類のもう一本の記事で掘り下げています。
| 書類 | 出す先 | 押す印 |
|---|---|---|
| 登記の申請書(書面申請) | 法務局 | 登記所に提出している印鑑 |
| 委任状(代理人に頼むとき) | 法務局 | 登記所に提出している印鑑 |
| 印鑑カード交付申請書 | 法務局 | 登記所に提出した印鑑 |
| 印鑑・印鑑カード廃止届書 | 法務局 | 登記所に提出した印鑑(押せなければ個人の実印+証明書) |
| 重要な契約書など | 取引の相手 | 会社実印。印鑑証明書を添えることが多い |
※7出典:商業登記規則|e-Gov 法令検索(e-Gov(デジタル庁)・確認日 2026年10月12日)
まとめ:会社実印は「会社の印」、届け出るのは「代表者個人」

代表者印は会社を代表して押す印を指し、登記所に届け出た印を会社実印・登記所届出印と呼びます。「丸印」は形の呼称であり、実印とは限りません。個人の実印とは、届出先も、証明書を出す機関も、大きさの物差しも違います。そして会社設立で会社実印を書面で届け出るときには、通常は本人確認のために個人の実印も使います。
- 代表者印は作成と届出を分けて考える。届出済みかを確認する
- 会社実印の届出先は法務局。証明書は法人の印鑑証明書
- 1辺1cmの正方形に収まらず、3cm四方からはみ出さない大きさが条件。形・書体の指定はない
- 届書には会社の印と個人の実印を押し、個人の印鑑証明書(3か月以内)を添える
- 代表者交代時は新たな届出が必要。カードは同時に承継を申し出られる
会社設立の準備でいちばん大事なのは、この二つの実印を頭の中で混ぜないことです。会社の印は会社の金庫に、個人の実印は自分の手元に。持ち主と保管場所を分けておけば、どちらの手続きでも迷いません。
印鑑の種類全体の中での位置づけは種類と本数の分類、法人の印鑑証明書の取り方は法人の印鑑証明書の分類へどうぞ。
※8出典:法務局「よくあるご質問等<商業・法人登記関係>」(法務局・確認日 2026年10月12日)
会社実印は会社のもの、個人の実印はあなたのもの。会社設立の書類をそろえる日に、印影を不用意に共有せず、用途と保管場所を管理用のメモに残しておくと、数年後に代表者が替わるときや、急に印鑑証明書を求められたときに役立ちます。同じ引き出しに入れないこと。それだけでも、取り違えはぐっと減ります。

